家から出た途端、ぴゅうっと風が吹いてきてハヤトは「さぶっ!!」と声を出して体を震わせた。
一方、後から出てきたクラレットは「どうしましたか?」と首を傾げる。表情はいつも通りで、「何気にクラレットって寒さに強いよなぁ」と両手を擦りあわせながらハヤトが言うと、クラレットは微笑みながら頷いた。
「リィンバウムにいた頃の方が寒い場所に行ったりして慣れました。……ハヤトも行きましたよね?」
「それとこれは別ー。さむいーさーむーいーー」
今日はクラレットの冬服を買いに行く為の外出なのだ。クラレットが名も無き世界……というより日本で初めて過ごす冬。衣服は少しずつハヤトの母と買い揃えているようなのだが、冬物はまだだったらしい。
そこで、ハヤトも休日の日曜日にこうして共に行こうという話になったのである。
母に軍資金を渡される時、「しっかりリードするのよ? あなたが迷子にならないようにね?」と念を押されてしまった。リードできるかはともかく、のんびり二人で過ごす時間はハヤトにとっても嬉しいものだ。
再びぴゅうっと風が吹くと、クラレットは「ひゃあ」と小さく声をあげた。髪が風にさらわれバサバサになったのを抑えていると、ハヤトは「なんだ、クラレットも寒いんだ」とあっけらかんと感想を漏らした。
ハヤトはごそごそと通学の時も使っているマフラーをはずし、クラレットと自分の首に大雑把に巻きつけた。
「ほらほら、あったかい。マフラー買わなくちゃな〜」
「……あったかいです」
流石にこのまま往来を歩く度胸はない。ハヤトが「今日は俺の使ったらいいよ」と笑った。
「…………」
じっとクラレットがハヤトの顔を見つめる。どうしたんだろうと思い、「クラレット?」とハヤトは名前を呼んだ。
「……私のを、買ったら……また、こうしてもらえないです……か……」
「へ」
マフラーを解こうとしていた手が、ピタリと止まる。ハヤトがまじまじクラレットを見つめ返すと、途中でクラレットは俯いてしまった。
「わ、私の為にお買い物をしてくれるのに、我が侭言ってごめんな」
言い終わる前に、ぎゅーっと強く抱きしめられていた。温かい以上に、熱い。クラレットはどぎまぎしながら「ハヤト……?」と突然の行動に驚いていると。
「買っても買わなくても、いつでもいいよ……あ、クラレット。赤い」
「えっ!?」
ドキッとしてクラレットがうろたえている間に、ハヤトはクラレットの手を掴んでいた。
「ほら。ほっとくと寒さで痛くなるって。手袋も買わないとな」
すでに思考が本日の目的に移行しているらしいハヤトをむっと睨もうとしたが、失敗してしまった。
二人でマフラーは無理だけど……、今日は、手を繋いで歩こうね?
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